世界樹の迷宮5 妄想ストーリー2章「二人組の冒険者」
やっと着いた~!!
森から抜け出し目の前にアイオリスと書かれた看板。
ようやく日の光が差し込み、小鳥たちのさえずりとしんとした空気が辺りを包んでいる。
「ここに来るまで会わなかったねー、ほんとどこにいったんだろ?」
仲間がいなくなったとは思えない、明るい声で言う。
ふさふさとしたボリュームのある髪とピンと立った耳を揺らしながら、周りを見回す。
後ろからささやくような声が聞こえた。
「……ん、たぶん森の中だと思う、ユン」
艶のある黒髪、腰まで届きそうな長い髪を一つに結び、その先はしっぽのようにふりふりと首を振ると一緒に揺れていた。
「えーっ、結構ゆっくりきたつもりなんだけど、サーちゃん大丈夫かな……」
どうしてこうなっちゃったんだろ……
それは三日前にさかのぼる。
森の中で休憩していたときのこと。
「ボクとナナちゃんで水汲んでくるからここで待っててねっ!!」
そういってボクたちは歩いて十分ぐらいのところにある川で水を汲んだ。
ついでにそこらへんにある木の実とか取っていきながら戻った。
そしたら、サーちゃんはいなかった。
代わりにメモが一枚残されていた。
「私一人だけ何もしないというのは悪いので、そこ辺りで食材を調達してきます。サクラ」
「「……」」
ボクたち二人は不安を隠せなかった。
だってサーちゃん、方向音痴なんだもん。
それから二時間が経った。
「大丈夫だと思う?」
ナナちゃんに聞いてみる。
「……明日の陽が昇るまでに帰ってこなかったら、ダメかも」
空を見上げるとずいぶんと陽が傾いていた。
後四時間ほどすれば辺りは暗くなるだろう。
「う~ん、じゃあ明日の朝までここに来なかったら、先に行くしかないね」
「……うん」
ボクたちの行く先は同じだ。
もし迷子になったとしてもアイオリスの街で待ってればきっと来るはず……。
そう信じて、拾ってきた食材を使って料理を作って食べた。
結局眠くなるような時間まで帰ってこなかった。
空はキラキラと星が輝いて、見上げているうちに自然と眠りについていた。
二人だけの朝
朝起きるとナナちゃんは先に起きていて、スープを作っていた。
「おはよー、ナナちゃん!!おいしそうだねっ」
「……おはよう、ユン、もうすぐできる」
朝の食事を摂ると辺りを見回す。
昨日と変わらない景色が広がっていた。
「しかたない、行こっか?」
「……うん」
サーちゃん、大丈夫だといいな……。
最初に戻る!!
「街の中は賑やかだね、じゃあ最初はギルド登録かな?」
「……うん、街の中央にある大きな建物がそのはず」
すれ違う冒険者を横目にギルドに向かう。
建物は立派ですごく豪華って感じがした。
扉を開けると、冒険者で溢れかえっているかと思ったけどそんなことはなかった。
机の横に一人の全身鎧をまとった人が立っていた。
「すみませ~ん、ギルド登録したいんですけど……」
「ようこそ、冒険者ギルドへ」
(わ~っ、意外と若い人の声だ~。)
そういって彼は二枚の紙切れを差し出してきた。
受け取ってナナちゃんに一枚渡す。
細かい文字がたくさん並んでる……。
うぅ~ん、よくわからない、よし!ナナちゃんに聞いてみよ。
「ナナちゃん、どんな感じのことが書いてあるの?」
「……迷宮に挑む際、そのすべての責任を負うことをここに記します、って書いてある」
「そうなんだ、じゃあ最後のところに名前に書けばいいんだね!!」
さらさらっと、自分の名前を書き込む。
隣を見ると同じように書いてるけどすごく字がきれいだ。
「ナナちゃん、書き終わった?」
「……うん、はいこれ」
ボクとナナちゃんの紙をもって鎧の人に行く。
「これで大丈夫?」
じっくり嘗め回すように紙に目を通していく。
「ああ、大丈夫だこれでギルド登録完了だ、また何かあれば来るといい」
「は~い、じゃあ、いこナナちゃん!!」
走り出すように外に飛び出た。
う~んやっぱり外の空気はいいな~
「これからどうしようか」
「……まずはサクラと会えるように冒険者が集まるところで待ってた方がいいと思う」
そっか、そうだよね、じゃあそこらへんに歩いてる人に聞いてみよう。
「すみませ~ん、この街で冒険者が集まるところってどこですか」
話しかけた人は同じく冒険者らしく、笑いかけるように話しかけてきた。
「それなら、魔女の黄昏亭かジェネッタの宿だな、場所は……」
「ありがとうございます、それじゃあさっそく向かってみます」
冒険者と別れを告げ、まずは魔女の黄昏亭へと向かった。
カランカランという音とともに扉を開く。
人がいっぱいだ~、しかも冒険者だらけ、ここならサーちゃんもきっと見つけてくれるはず。
店員に案内された場所に二人で座る。
「とりあえず、何か頼もうか?」
「……うん」
食事を済ませて夜になってもサーちゃんは現れなかった。
今日はこれ以上待っても来ない気がする。
ボクたちは紹介されたジェネッタの宿へ向かった。
「二人様ですね、こちらです」
案内された部屋に通される。
部屋に入ってベットにダイブ!!
「わふ~っ、久々のふかふかの布団だよっ!!」
ナナちゃんは落ち着いた様子でベットに腰を降ろす。
「う~ん、サーちゃんが来るまでどうしようか?」
「……話を聞いた限り、ここと魔女の黄昏亭が冒険者が最も集まる場所って言ってたから、昼は黄昏亭、夜は宿のローテーションで待つしかない」
「そうだね、じゃあ、伝言でも伝えておこうよ、すれ違いとか起こるかもしれないし」
早速、宿の人にサーちゃんが来たら自分たちがいることを伝えるように言った。
「今日は疲れたし、寝よっか」
「……うん、おやすみ」
電気を消して、疲れてたからかすぐに眠りについた。
サーちゃんどれだけ迷子になってるんだろう
この街に来てから三日が経った。
「それにしてもサーちゃん遅いね」
「……仕方ない、あれは筋金入りの方向音痴」
今日も黄昏亭へと来ていた。
冒険者の話を聞いたりして今日も時間が経っていく。
そして夕暮れ時、黄昏亭の扉が開く。
入ってきた人物とは?
つづく?