静かな世界に響く、一つの音

自分の趣味全開で書いていく、そんなブログです。

物語

【物語】青い空は春風とともに 中編

leo1592.hatenablog.com さわさわと木の葉が揺れる音がする。どうやら眠っていたようだ。後ろには樹齢何百年もありそうな、大きな樹がそびえ立っていた。私は起き上がり、樹に手をつく。表面はたわしのようにざらざらしてて撫でるには痛い。手を当てながら思…

【物語】それは夏の日のこと 空に花が咲いた

カランコロンと足元でリズムよく音が鳴る。周りの人より少し遅れたテンポで歩く私。生まれて初めて浴衣を着た。その感想として出てきたのは歩きづらいという女の子らしくないものだった。 たしかに呉服屋で見たとき、普通の服では見ることはない色がたくさん…

【物語】文学少年とおしゃべり少女 僕←本→少女の三十センチの距離

一本の木の下で本を読んでいた。いや読むふりをしていた、というべきか。本の開かれたページに書かれている文章を描かれた絵のように眺める。ただそうしていたいのだ。そこに一つの声が落ちてきた。 「何読んでるの?」 人懐っこそうな声が耳に届く。僕はそ…

【物語】少女と白い花とお花畑

少女は言いました。 「このお花畑はとてもきれいで、今まで見てきた景色で一番心に残りそう」 そうつぶやくとお花畑に近づいて行きました。花は陽の光を浴び、昨日降った雨がキラキラと輝いていました。少女は服が濡れるのも構わず、お花畑を歩いていきます…

【物語】空のように移ろいゆく思い そして、

立ち並ぶ商店街の店たち。人はまばらで昔はあんなのだったのにと思いたくなるような気持ちだった。同じ場所に住んでいても徐々に変化していく町の形がわかる。それはとても悲しいようで寂しい思いが胸の中で膨らんだ。変わっていく町並みを見ていると思い出…

【物語】世界滅亡というばかげた戯言と俺とアイツ 

「世界が滅亡するってよ」 どこかの誰かがそう言った。ノストラダムスの予言とか2000年問題とかマヤ文明とかそういったのはもううんざりだった。世界なんて勝手に滅亡してろって話だ。俺には関係ない。机にうつ伏せて腕を枕にし眠ったふりをする。ばかばかし…

【物語】「最後の一日をもう一度だけ」見えない真実 わからない気持ち

leo1592.hatenablog.com キンコンカンコン、よくある鐘の音が聞こえてくる。 私は机にノートを広げながら考えていた。彼女、ゆいは今日の夜、交通事故によって死ぬ。そう思うだけで背筋が凍る感触が鳥肌となって現れる。恐れてる場合じゃない、助けるんだ。…

【物語】青い空は春風とともに 前編

風を全身で受けるように両手を広げる。耳を澄ますとさわさわと草や葉っぱが身をこする音を感じた。目を開けるとまばらに広がる雲と隙間から見える青いコントラストが何とも言えず、ただ見上げていた。ときたま差し込む太陽に陽が肌を熱くさせる。その心地よ…

【物語】思い出とタイムマシーン

引っ越しの準備 部屋の中には段ボールの箱がいっぱいだった。 「えっと、これはこっちの段ボールに入れて、これは――」 押入れから色んなものを取り出し、種類ごとに分けていく。元々片付けはそんなに好きじゃない。そのせいで押入れの中はごちゃごちゃになっ…

【物語】両手いっぱい、心はからっぽ

「ねぇねぇ、おじさんどうして赤い服を着てるの?」 ダウンジャケットを着なければ寒さが身に染みる12月末の冬の日のことだった。 そこには自分の背丈の倍ほどもある赤い服を着たおじさんが立っていた。 「おじさんが赤い服を着たらいけないのかい?」 あご…

【物語】「最後の一日をもう一度だけ」 奇跡はもういらない、私が奇跡になる

「なっちゃん、置いてちゃうよ」 ゆいはそういうとたったったっと走り出した。 「待ちなさいよ、ゆい」 私もそういって走り出す。 二人して走る放課後のろうかは静かでまるで二人だけの世界みたいだった。 窓から差し込む夕焼けは私たちの影を伸ばし、いっそ…