静かな世界に響く、一つの音

自分の趣味全開で書いていく、そんなブログです。

ちょっと切ない青春物語 「明日、今日の君に逢えなくても」

「明日、今日の君に逢えなくても」というタイトルだけでいったいなんなのだろうと、わくわくしました。

本を買う時は大体タイトルとあらすじで買っています。

本の中を読んで決めるということはほとんどしないです。

面接をするときと同じで、会って数秒で印象ですべてが決まってしまいます。

つまり、どんなに良い本でもタイトルで惹かれなければ手に取ることはありません。

興味を惹かれた本のあらすじを読み、自分に合うなと思えば買います。

 

この二段階の工程で私は本を選んでいます。

この本もそうして手に取りました。

「明日、今日の君に逢えなくても」ってどんな内容?

簡単に言えば兄(主人公)と妹(ヒロイン)の物語です。

しかしこの妹は特殊でシノニムという病気にかかっています。

シノニムというのはこの本の造語で、現実世界にある病気にとてもよく似ています。

それは解離性同一障害。これはいわゆる多重人格というものです。なにか強い出来事がきっかけで起こるとされています。

では違いはどこにあるでしょう?それはシノニムは治す方法があるということです。

主人格を守るように作られた人格、その人格のもっとも望んでいる願いが叶うと消えるというものです。

妹は一つの体の中に3人の人格があります。

蘭香、茜、藍里。

3人はいつからか分からないけど治そうと思いはじめます。

一人ひとりそれぞれの方法で自分の願いを叶えます。

もし自分が主人格じゃなければ消えてしまう。

それでも彼女たちは自分の中にある願いを叶えるとともに一人の人間として、一度きりの生をまっとうします。

そこには自分は主人格とか作られた別の人格とか関係なく生きていく、彼女たちが織りなすちょっと切ない物語が綴られています。

最後に

夏の暑い日の中、涼しい風が通り抜けていくような爽やかな気持ち。

8月の終わり、夕日を眺め夏の終わりを感じながら空を見上げる。

10年前、友達と一緒に遊んだ記憶を思い出しながら公園のベンチに座って軽やかに駆けていく子供を目で追っている。

そんななんとも言えないような気持ちが詰まった本になっています。

終わることの切なさ、始まりの希望、出会いと別れ、例え昨日の君に明日逢えなくても、僕が君のことを覚えている。

終わりは決して死という分断されたものではなく、生きているものがいる限り、覚えているものがいる限り続いていく。

本は約200ページ程度で物語の幕は閉じるが、僕の中では彼女たちが残した思い、感じた気持ちは小さな結晶となって、心の中に残っていくでしょう。